先に結論|ハクビシンは外来種。ただし特定外来生物には指定されていない
ハクビシンは、遺伝子解析によって台湾などから入ってきた外来種と結論づけられています(環境省生物多様性センター)。
ただし外来生物法上の特定外来生物には指定されておらず、環境省の特定外来生物等一覧にも記載がありません。
2015年公表の生態系被害防止外来種リストでは、重点対策外来種として掲載されています(環境省生物多様性センター)。
鳥獣保護管理法上は狩猟鳥獣(獣類)に指定されており、許可なく捕獲・殺傷することはできません。
分類は哺乳綱 食肉目(ネコ目) ジャコウネコ科、学名は Paguma larvata です(国立環境研究所 侵入生物データベース)。
屋根裏で物音がして正体を知りたい場合は、ハクビシンの見分け方と駆除 もあわせてご覧ください。
ハクビシンが日本にやってきた理由は何ですか?|江戸時代の記録と毛皮用の持ち込み
ハクビシンの原産地は、ヒマラヤ、中国南部、台湾、マレー半島、スマトラ、ボルネオとされています(国立環境研究所 侵入生物データベース)。
日本へは江戸時代に持ち込まれた記録があり、戦時中にも毛皮用に持ち込まれたとされています(国立環境研究所 侵入生物データベース)。
記録として最初に確認されたのは1943年、静岡県でのことでした(環境省生物多様性センター)。
人の手で海外から持ち込まれた動物が、時間をかけて国内に広がったという経緯があります。
外来種か在来種かは、なぜ長く争われたのか|遺伝子解析で決着した
1943年に静岡県で初めて記録された当時、ハクビシンの分布は東北・東海・四国の3地域に不連続に存在していました(環境省生物多様性センター)。
つながりのない3地域に同時に現れたことが、在来種なのか外来種なのかをめぐる議論の材料になっていました。
この疑問に決着をつけたのが遺伝子解析です。
解析の結果、日本のハクビシンは台湾などから入ってきた外来種であると結論づけられています(環境省生物多様性センター)。
不連続な分布は、別々の経路で複数回持ち込まれたことを示していると考えられます。
今はどこまで広がっているか|2018年時点で37都府県
2018年時点で、北海道・山口県・九州沖縄地方の計10道県を除く37都府県で生息分布情報が得られています(環境省)。
被害報告は年々増加しており、被害発生地域は都市部で拡大しているとされています(環境省生物多様性センター)。
農作物への被害も続いており、令和5年度の全国の農作物被害面積は約0.3千ヘクタールです(農林水産省)。
ハクビシンは特定外来生物か|指定はなく、アライグマとは扱いが違う
ハクビシンは特定外来生物に指定されていません。
環境省の特定外来生物等一覧にも記載がありません。
政府は、現行の基本方針上、ハクビシンを特定外来生物に指定することは考えていないと答弁しています(衆議院 答弁書 2019年5月31日)。
一方でアライグマは特定外来生物に指定されており、生きたままの運搬・飼養・放出が禁止されています。
同じ屋根裏に侵入する外来種でも、ハクビシンとアライグマでは法律上の扱いが異なります。
ただしハクビシンも、2015年公表の生態系被害防止外来種リストでは重点対策外来種として掲載されており、対策が不要というわけではありません(環境省生物多様性センター)。
屋根裏の動物がアライグマかハクビシンか分からない場合は、アナグマとハクビシンの見分け方 も参考にしてください。
ハクビシンはなぜ駆除できないのですか?|外来種でも捕獲には許可が要る
鳥獣保護管理法により、対象となる鳥獣は許可なく捕獲・殺傷することができません。
ハクビシンはこの法律上の狩猟鳥獣(獣類)に指定されています(環境省)。
捕獲許可の申請先は市区町村または都道府県の担当課で、被害状況の説明が求められます。
東京都は、許可のない捕獲は1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になると案内しています(東京都環境局)。
東京都内の申請先は、23区内が東京都環境局、多摩地区が東京都多摩環境事務所です(東京都環境局)。
栃木市では捕獲開始の10日前までに申請書の提出が必要で、わなは1日1回以上の見回りが義務づけられ、対象以外の動物がかかった場合は直ちに放獣します(栃木市)。
許可なく鳥獣を捕獲した場合、鳥獣保護管理法違反として罰則を受ける可能性があります(栃木市)。
上尾市は、ハクビシンは被害がある場合のみ捕獲許可の対象で、目撃のみでは捕獲できないとしています(上尾市)。
なお、クマネズミ・ドブネズミ・ハツカネズミは鳥獣保護管理法の対象外で、自力で駆除できます。
ハクビシンの何がやばいのですか?|ため糞・感染症・年間を通した繁殖
ハクビシンにはねぐらなどにため糞をする習性があり、通路上の側溝や溜まり水にも糞をする場合があります(国立環境研究所)。
家屋に侵入して糞尿を排泄するため、天井のシミ汚れや異臭が生じる場合が多いとされています(環境省生物多様性センター)。
天井裏で出産・育児をする場合もあります(農林水産省)。
国立環境研究所は出産期を3〜12月、産子数を1〜4頭としています。
農林水産省は繁殖期を1〜9月、出産期を3〜11月と推定し、ほぼ年間を通じて繁殖するとしています。
生後3か月で成獣と同程度の体重になります(農林水産省)。
明確な縄張りを持たず、複数のねぐらを他個体と共同または時間差で使うこともあります(農林水産省)。
農林水産省は、ノミやダニが付いており、それらが媒介する病気があるとしています。
東京都環境局は、アライグマ・ハクビシンが媒介する主な感染症としてレプトスピラ症、E型肝炎、サルモネラ感染症、疥癬などを挙げています。
体調に不安があるときは医療機関に相談してください。
天井裏の糞に気づいた場合は、フンがある も確認の参考になります。
外来種としての体の特徴|どこから家に入ってくるのか
顔の中央に鼻から額にかけて白い線が通り、体色は灰褐色、顔面と四肢の下部は黒褐色です(国立環境研究所)。
頭から尾の先までの長さは90〜110センチで、足が短いのが特徴です(町田市)。
全長は約90〜140センチとされ、害獣のなかでは大型に分類されます(害獣対策の窓口)。
国立環境研究所は、頭胴長をメス61センチ・オス66センチ、尾長40センチ、体重約3キロとしています。
前肢・後肢とも丸形の5本指で分厚い肉球を持ち、これを押し付けて挟むように上り下りするため、雨樋のような滑らかな柱でも登れます(農林水産省)。
夜行性で、昼間は樹洞・岩穴・人家の屋根裏などで休憩します(国立環境研究所)。
雑食性で果実や種子を好み、昆虫類、魚類、残飯なども食べます(国立環境研究所)。
農林水産省は、幅6センチ×高さ12センチ程度の隙間があれば屋内に侵入できるとしています。
一辺8センチの正方形、直径9センチの円形の開口部から侵入できるとする業者の案内もあります(害獣駆除専門業者ホームスター)。
通風口などから住居内へ侵入する場合が多く、農林水産省は昭和30年代中頃から40年代後半に建築された建物で侵入率が最も高いとしています。
姿がテンやイタチに似ていて判断がつかない場合は、テン・イタチとハクビシンの見分け方 もあわせてご確認ください。
その音と気配、本当にハクビシンか|相手が違えば扱う法律も変わる
屋根裏の音の正体によって、とれる対応も変わります。
コウモリは鳥獣保護管理法の対象で、捕獲・殺傷はできず、追い出しと侵入口の封鎖で対応します。
コウモリは追い出し以外の方法が原則とれず、冬眠期にあたるおおむね12〜3月は追い出しもできません。
クマネズミ・ドブネズミ・ハツカネズミは鳥獣保護管理法の対象外です。
アライグマは特定外来生物で、生きたままの運搬・飼養・放出が禁止されています。
音の正体が動物とは限りません。
木造住宅では、冬の乾燥時や天井裏と室内の温度差が大きい時に、木材の乾燥による軋み音が数年にわたり生じることがあり、必ずしも施工上の瑕疵ではなく木材の自然な性質による可能性があるとされています(住まいるダイヤル)。
マンションでは給排水管のウォーターハンマー音や、ポンプ・エレベーターの振動が固体伝搬音として聞こえる例も報告されています(住まいるダイヤル)。
天井のシミや水音が雨漏りではなく、室内外の温度差による結露が原因の場合もあります(住まいるダイヤル)。
住まいるダイヤルは国土交通大臣指定の住宅相談窓口で、住宅の不具合に関する電話・専門家相談を無料で受け付けています(住宅リフォーム・紛争処理支援センター)。
音の種類から正体を絞りたい場合は、屋根裏で音がする。正体を音から絞る をご覧ください。
外来種の捕獲を自治体に任せられるか|名前の出ている市区の事業と条件
自治体によっては、ハクビシンの捕獲を支援する事業があります。
町田市はアライグマ・ハクビシン防除事業として、わなの設置・捕獲・処分を無料で行っています。ただし消毒と侵入口の封鎖は自己負担で、わなの設置期間は最長3週間、延長はできません(町田市)。
板橋区は平成29年度からハクビシン・アライグマの捕獲駆除事業を行っていますが、侵入路の封鎖、ふん尿の撤去、消毒は区の事業の対象外で、自分で業者へ依頼する必要があります(板橋区)。
目黒区は箱わなの貸出と捕獲動物の回収費用を負担しますが、糞尿の清掃・消毒と侵入口の封鎖は自己負担です。区内在住・糞尿被害の実在・立会いが条件で、年度1回限りです(目黒区)。
横浜市は住居内への侵入被害に限り市契約業者による捕獲・回収を無料で行い、庭での目撃や池の被害は対象外です。一人当たり2週間まで、年1回限りです(横浜市)。
船橋市はアライグマ・ハクビシン限定の捕獲用ワナを無料貸出しし、設置期間は最大8週間です(船橋市)。
狛江市の箱わな貸出は1日1回以上の見回りが条件で、貸出期間は原則3週間です(狛江市)。
千葉市は生活被害を受けた人を対象に箱ワナを貸し出し、貸出期間は原則設置日から1か月間です(千葉市)。
戸田市は箱わなによる捕獲を無料で実施しますが、初回設置時を除きエサは利用者が用意します(戸田市)。
八王子市は獣害対策課がアライグマ・ハクビシン捕獲用の箱わなを貸し出しています(八王子市)。
上尾市は、屋内への住み着き等で市が対応できない場合、防除業者への相談が必要で費用は自己負担と明記しています(上尾市)。
横須賀市は、屋根裏や縁の下にムササビ・コウモリ・タヌキが棲みついた場合の相談への回答を公開しています(横須賀市)。
ここに挙げたのは町田市・板橋区・目黒区・横浜市・船橋市・狛江市・千葉市・戸田市・八王子市・上尾市の事業です。
ほかの市区町村に同じ事業があるかは確認していません。
お住まいの市区町村の担当課で、対象の動物と条件を確認してください。
自治体の制度は年度で変わることがあります。
お住まいの地域の制度は、自治体の制度 からも確認できます。
外来種と分かったあと、自分で動く範囲と任せる範囲
駆除作業は「追い出し・捕獲」「清掃・消毒」「侵入口の封鎖」の3工程に分かれ、封鎖をしないと再発します。
中にいる状態で侵入口を塞ぐと閉じ込めになるため、出ていったことを確認してから封鎖する必要があります。
自治体の事業で捕獲まで済んでも、町田市・板橋区・目黒区では消毒と侵入口の封鎖は自己負担になります。
町田市は民間業者の相談先として、公益財団法人東京都ペストコントロール協会(03-3254-0014)を案内しています。
賃貸住宅の場合、費用負担は管理会社または貸主との取り決めによるため、先に連絡先を確認してください。
捕獲を自分で行う場合は許可が必要で、許可なく捕獲した場合は鳥獣保護管理法違反として罰則を受ける可能性があります(栃木市)。
具体的な予防や封鎖の手順は、ハクビシン対策 にまとめています。
業者に相談するかどうか迷う場合は、いい業者の見つけ方 も参考にしてください。
