ハクビシンは日本の野生動物か|外来種として野生化した動物である
結論から言うと、ハクビシンは現在、日本各地で野生の状態で暮らしている動物です。
ただし、もともと日本に生息していた動物ではありません。
国立環境研究所の侵入生物データベースでは、学名 Paguma larvata、哺乳綱 食肉目(ネコ目)ジャコウネコ科に分類されています。
原産地はヒマラヤ、中国南部、台湾、マレー半島、スマトラ、ボルネオとされています。
環境省生物多様性センターは、遺伝子解析の結果、日本のハクビシンは台湾などから入ってきた外来種と結論づけています。
江戸時代に持ち込まれた記録があり、戦時中にも毛皮用に持ち込まれたとされています。
1943年に静岡県で初めて記録され、当時は東北・東海・四国の3地域に不連続な分布域がありました。
つまり、飼育個体が逃げ出した一時的なものではなく、野生で繁殖して世代を重ねてきた動物という位置づけになります。
見分け方や駆除の全体像は、ハクビシンの見分け方と駆除 で詳しく扱っています。
ハクビシンは普段どこにいる?|野生個体の一日の過ごし方
ハクビシンは夜行性で、日中は休んでいます。
国立環境研究所は、昼間は樹洞・岩穴・人家の屋根裏等で休憩するとしています。
農林水産省は、明確な縄張りを持たず、複数のねぐらを他個体と共同または時間差で使うことがあるとしています。
つまり、昨夜いた場所と今夜いる場所が同じとは限りません。
屋根裏で物音がするのに、昼間に姿が見えないという状況は、この行動と矛盾しないことになります。
複数のねぐらを使い分けているため、1回の対応で完全にいなくなったとは判断しにくい点には注意が必要です。
屋根裏の音の正体を詳しく知りたい場合は、屋根裏で音がする。正体を音から絞る も参考になります。
ハクビシンが庭に来るのはなぜ?|野生の食べ物と、住宅地にある食べ物
国立環境研究所は、ハクビシンが雑食性で果実や種子を好み、昆虫類、魚類、残飯等も食べるとしています。
果実を好むため、家庭菜園や果樹の被害も出ます。
農林水産省の公表によると、令和5年度の全国の農作物被害額は約3億6500万円、被害面積は約0.3千ヘクタールです。
庭にある果樹、出したままの生ゴミ、屋外に置いたペットフードは、野生の食べ物と同じ対象になりえます。
木登りが得意で、庭から屋根まで一続きになる
ハクビシンは木登りが得意で、屋根や電線から侵入します。
農林水産省は、前肢・後肢とも丸形の5本指で、分厚い肉球を持つとしています。
分厚い肉球を押し付けて挟むように上り下りするため、雨樋のような滑らかな柱でも登れます。
庭にある木や雨樋は、建物の中まで一続きの経路になっている場合があります。
野生のハクビシンが家の中に入ってくる条件
農林水産省は、幅6センチ×高さ12センチ程度の隙間があれば屋内に侵入できるとしています。
害獣駆除専門業者ホームスターの案内では、一辺8センチの正方形、直径9センチの円形の開口部からも侵入できるとされています。
農林水産省は、通風口などから住居内へ侵入する場合が多く、壁の隙間の有無が侵入されやすさに影響するとしています。
さらに、昭和30年代中頃から40年代後半に建築された建物で侵入率が最も高いとしています。
天井裏で出産・育児をする場合があることも、農林水産省が示しています。
侵入口の具体的な塞ぎ方は、ハクビシン対策 で扱っています。
なお、中にいる状態で塞ぐと閉じ込めになるため、封鎖は出ていったことを確認してから行う必要があります。
東京をはじめ、野生のハクビシンはどこまで広がっているか
環境省は、2018年時点で北海道・山口県・九州沖縄地方の計10道県を除く37都府県で生息分布情報が得られているとしています。
環境省生物多様性センターは、被害報告は年々増加しており、被害発生地域は都市部で拡大しているとしています。
1943年の静岡県での初記録当時は、東北・東海・四国の3地域に不連続な分布域しかありませんでした。
そこから現在の広がりを見ると、数十年のあいだに分布域が大きく拡大してきたことがわかります。
東京都内で目撃が増えているという印象は、こうした分布拡大と重なるものです。
ハクビシンの何がやばいのですか?|野生動物として家に入ったときに起きること
ハクビシンには、同じ場所に排泄する習性(ためフン)があります。
これが天井のシミや悪臭の原因になります。
国立環境研究所は、ねぐらなどにため糞をする習性があり、通路上の側溝や溜まり水にも糞をする場合があるとしています。
環境省生物多様性センターは、家屋侵入により糞尿を排泄するため、天井のシミ汚れや異臭が生じる場合が多いとしています。
天井のシミに気づいたら、フンがある も確認の手がかりになります。
農林水産省は、ノミやダニが付いており、それらが媒介する病気があるとしています。
東京都環境局は、アライグマ・ハクビシンが媒介する主な感染症として、レプトスピラ症、E型肝炎、サルモネラ感染症、疥癬などを挙げています。
体調に不安がある場合は、医療機関を受診してください。
野生のハクビシンは、どのくらいの速さで増えるのか
国立環境研究所は、出産期を3〜12月、産子数を1〜4頭としています。
一方、農林水産省は繁殖期を1〜9月、出産期を3〜11月と推定し、ほぼ年間を通じて繁殖するとしています。
出典によって時期の幅に差がありますが、いずれも長い期間にわたって繁殖することを示しています。
農林水産省は、生後3か月で成獣と同程度の体重になるとしています。
天井裏で出産・育児をする場合があるため、放置した期間がそのまま頭数に影響しうる点には注意が必要です。
キツネみたい、鼻が長い|その野生動物はハクビシンか
ハクビシンの特徴は、顔の中央に鼻から額にかけて白い線が通ることです。
国立環境研究所は、体色は灰褐色で、顔面と四肢の下部は黒褐色、額下部から鼻先の中央に白線が入るとしています。
町田市は、頭から尾の先までの長さを90〜110センチ、足が短いとしています。
害獣対策の窓口は、全長を約90〜140センチとし、害獣のなかでは大型に分類されるとしています。
国立環境研究所は頭胴長をメス61センチ・オス66センチ、尾長40センチ、体重約3キロとしています。
体長の数字に出典間で幅があるのは、尾を含めるかどうかの違いによるものです。
間違われやすい野生動物と、確認する場所
屋根裏や庭で見かける動物は、アナグマ、タヌキ、テン、イタチ、アライグマと取り違えられることがあります。
ハクビシンかどうかは、鼻から額にかけて白い線が通るかを確認します。
アライグマは特定外来生物に指定されており、生きたままの運搬・飼養・放出が禁止されているため、相手がどちらかで取り扱いが変わります。
アナグマとの詳しい見分けは アナグマとハクビシンの見分け方、テン・イタチとの見分けは テン・イタチとハクビシンの見分け方 で扱っています。
野生動物だから捕まえていいのか|ハクビシンの法律上の立ち位置
鳥獣保護管理法により、対象となる鳥獣は許可なく捕獲・殺傷することができません。
ハクビシンは、この法律上の狩猟鳥獣(獣類)に指定されています。
ただし、狩猟鳥獣であることは、誰でも自由に捕まえてよいという意味ではありません。
一方で、ハクビシンは特定外来生物には指定されておらず、環境省の特定外来生物等一覧にも記載がありません。
政府は2019年5月31日の答弁書で、現行の基本方針上、ハクビシンを特定外来生物に指定することは考えていないと示しています。
ただし、2015年公表の生態系被害防止外来種リストでは、重点対策外来種として掲載されています。
対して、アライグマは特定外来生物に指定されており、生きたままの運搬・飼養・放出が禁止されています。
東京都は、許可のない捕獲は1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になると案内しています。
栃木市も、許可なく鳥獣を捕獲した場合は鳥獣保護管理法違反として罰則を受ける可能性があるとしています。
捕獲許可の申請先は市区町村または都道府県の担当課で、被害状況の説明が求められます。
東京都内では、23区内が東京都環境局、多摩地区が東京都多摩環境事務所です。
ハクビシンを見かけたらどうしたらいいですか?|目撃だけの段階と、被害が出ている段階
許可のない捕獲はできないため、見かけた段階で自分から手を出すことはできません。
上尾市は、ハクビシンは被害がある場合のみ捕獲許可の対象で、目撃のみでは捕獲できないとしています。
横浜市は、住居内への侵入被害に限り、市契約業者による捕獲・回収を無料で行っています。
同市の制度では、庭での目撃や池の被害は対象外です。
つまり、庭で見ただけなのか、屋内に入られているのかによって、相談できる内容が変わってきます。
目撃と被害のどちらの段階かを整理したい場合は、ハクビシンを見つけたら を確認してください。
自治体が実施している防除事業の実例|名前の出ている市区の条件
町田市は、アライグマ・ハクビシン防除事業として、わなの設置・捕獲・処分を無料で行っています。
ただし、消毒と侵入口の封鎖は自己負担で、わなの設置期間は最長3週間、延長はできません。
町田市は、民間業者の相談先として公益財団法人東京都ペストコントロール協会(03-3254-0014)も案内しています。
板橋区は、平成29年度からハクビシン・アライグマの捕獲駆除事業を行っています。
同区では、侵入路の封鎖、ふん尿の撤去、消毒は事業の対象外で、自分で業者へ依頼する必要があります。
目黒区は箱わなの貸出と捕獲動物の回収費用を負担しますが、糞尿の清掃・消毒と侵入口の封鎖は自己負担です。
区内在住・糞尿被害の実在・立会いが条件で、年度1回限りとなっています。
横浜市は住居内への侵入被害に限り市契約業者による捕獲・回収を無料で行い、一人当たり2週間まで、年1回限りです。
船橋市はアライグマ・ハクビシン限定の捕獲用ワナを無料貸出しし、設置期間は最大8週間です。
千葉市は生活被害を受けた人を対象に箱ワナを貸し出し、貸出期間は原則設置日から1か月間です。
狛江市の箱わな貸出は、1日1回以上の見回りが条件で、貸出期間は原則3週間です。
戸田市は箱わなによる捕獲を無料で実施しますが、初回設置時を除きエサは利用者が用意します。
八王子市は獣害対策課がアライグマ・ハクビシン捕獲用の箱わなを貸し出しています。
栃木市では、捕獲開始の10日前までに捕獲許可申請書の提出が必要で、わなは1日1回以上の見回りが義務づけられています。
対象以外の動物がかかった場合は、直ちに放獣することになっています。
上尾市は、屋内への住み着き等で市が対応できない場合、防除業者への相談が必要で費用は自己負担と明記しています。
ここに挙げたのは、名前を出した市区の事業であり、ほかの市区町村に同じ事業があるかは確認できていません。
お住まいの市区町村の担当課で、対象の動物と条件を確認してください。
自治体の制度は年度で変わることがあります。
全体の制度については 自治体の制度 もあわせて確認してください。
野生のハクビシンが住み着いたあと、どこまで自分でやるか
駆除作業は「追い出し・捕獲」「清掃・消毒」「侵入口の封鎖」の3工程に分かれます。
封鎖をしないと、別の個体が同じ経路から再び入ってくることがあります。
町田市・板橋区・目黒区のいずれも、消毒と侵入口の封鎖は事業の対象外で自己負担です。
捕獲には許可が要る一方で、追い出しと封鎖は許可の対象外という線引きがあります。
賃貸住宅の場合、費用負担は管理会社または貸主との取り決めによります。
なお、ネズミ(クマネズミ・ドブネズミ・ハツカネズミ)は鳥獣保護管理法の対象外で、自力で駆除できます。
一方、コウモリは鳥獣保護管理法の対象で、捕獲・殺傷はできず、追い出しと侵入口の封鎖で対応します。
コウモリは冬眠期にあたるおおむね12〜3月は追い出しもできないため、時期によって取れる対応が変わります。
相手がハクビシンかどうかで、取れる手段そのものが変わってくるということです。
天井裏での具体的な作業内容は ハクビシン駆除は天井裏で何をするか、業者選びは いい業者の見つけ方 で扱っています。
