先に結論|ハクビシンの天敵に家から追い出す役は期待できない
野生下では、ハクビシンより大型の肉食動物に襲われることがあります。
ただし、住宅の天井裏に入り込んだハクビシンを、別の動物が追い出してくれるという役割は期待しにくいのが実情です。
ハクビシンは全長約90〜140センチで、害獣のなかでは大型に分類されます(出典:害獣対策の窓口)。
国立環境研究所は頭胴長をメス61センチ・オス66センチ、尾長40センチ、体重約3キロとしています。
この体格の動物が屋根裏に居着いた場合、天敵の有無よりも先に進めるべき作業があります。
駆除作業は「追い出し・捕獲」「清掃・消毒」「侵入口の封鎖」の3工程に分かれており、封鎖をしなければ再び侵入されます。
読者が実際に取るべき行動は、天敵を探すことではなく、この3工程を順に進めることです。
全体の流れはハクビシンの見分け方と駆除、各工程の詳しい内容はハクビシン対策で確認できます。
ハクビシンはどんな動物か|天敵を考える前に押さえる体格と生態
国立環境研究所の分類では、ハクビシンは哺乳綱 食肉目(ネコ目) ジャコウネコ科に属し、学名は Paguma larvata です。
原産地はヒマラヤ、中国南部、台湾、マレー半島、スマトラ、ボルネオとされます(出典:国立環境研究所 侵入生物データベース)。
遺伝子解析の結果、日本のハクビシンは台湾などから入ってきた外来種と結論づけられています(出典:環境省生物多様性センター)。
1943年に静岡県で初めて記録され、当時は東北・東海・四国の3地域に不連続な分布域がありました(出典:環境省生物多様性センター)。
2018年時点では、北海道・山口県・九州沖縄地方の計10道県を除く37都府県で生息分布情報が得られています(出典:環境省)。
夜に動き、昼は屋根裏で休む
ハクビシンは夜行性で、日中は天井裏などで休みます。
国立環境研究所は、昼間は樹洞・岩穴・人家の屋根裏等で休憩するとしています。
木と柱を登る体のつくり
前肢・後肢とも丸形の5本指で、分厚い肉球を持ちます(出典:農林水産省)。
この肉球を押し付けて挟むように上り下りするため、雨樋のような滑らかな柱でも登れます(出典:農林水産省)。
木登りが得意で、屋根や電線から侵入します。
食べるものと、ねぐらの使い方
雑食性で果実や種子を好み、昆虫類、魚類、残飯等も食べます(出典:国立環境研究所)。
明確な縄張りを持たず、複数のねぐらを他個体と共同または時間差で使うことがあります(出典:農林水産省)。
ハクビシンの天敵として名前が挙がる動物を、事実から整理する
ハクビシンは食肉目ジャコウネコ科に属する肉食寄りの雑食動物です。
国立環境研究所の数値では、頭胴長はオスで66センチ、尾長40センチ、体重約3キロという体格です。
この体格を上回る中・大型の肉食動物であれば、ハクビシンを捕食する側に回ることは考えられます。
逆に、ハクビシンより小柄な動物は相手になりにくいと読むのが自然です。
また、ハクビシンは夜行性で、日中は樹洞・岩穴・人家の屋根裏等で休むため(出典:国立環境研究所)、昼に活動する動物と出会う機会そのものが限られます。
ここで押さえておきたいのは、市街地の住宅に入り込んだ個体について考えるときの視点です。
野生下で想定される捕食者が、はたして住宅地の天井裏まで現れるかという点です。
本記事で扱えるのは、こうした出典のある生態と体格の記述までです。
個別の捕食例については、当サイトで出典を確認できた範囲に限って書いています。
ハクビシンの天敵は猫ですか?|猫とハクビシンはどっちが強い
町田市「アライグマ・ハクビシン防除事業」は、ハクビシンの頭から尾の先までの長さを90〜110センチ、足が短いとしています。
国立環境研究所の数値では、頭胴長はメス61センチ・オス66センチ、尾長40センチ、体重約3キロです。
飼い猫を天敵として期待して屋外に出すという考え方もありますが、注意が必要です。
猫とハクビシンは、同じ夜の時間帯に行動する動物どうしであり、接触する可能性があります。
農林水産省は、ハクビシンにはノミやダニが付いており、それらが媒介する病気があるとしています。
東京都環境局は、アライグマ・ハクビシンが媒介する主な感染症として、レプトスピラ症、E型肝炎、サルモネラ感染症、疥癬などを挙げています。
接触が疑われる場合や体調に不安が出た場合は、医療機関へ相談してください。
国立環境研究所はハクビシンが残飯等も食べるとしており、ペットフードや残飯を屋外に置いたままにすることは、ハクビシンを引き寄せる要因になりえます。
ハクビシンの天敵はカラスですか|昼と夜で行動の時間が分かれる
ハクビシンは夜行性で、昼間は樹洞・岩穴・人家の屋根裏等で休憩します(出典:国立環境研究所)。
カラスは昼に活動する鳥であるため、活動する時間帯が分かれ、屋外で両者が出会う場面は限られると考えられます。
出産期について、国立環境研究所は3〜12月・産子数1〜4頭としています。
農林水産省は繁殖期を1〜9月、出産期を3〜11月と推定し、ほぼ年間を通じて繁殖するとしています。
生後3か月で成獣と同程度の体重になります(出典:農林水産省)。
天井裏で出産・育児をする場合があるため(出典:農林水産省)、屋内に入られた段階では、屋外の動物相の影響はほとんど及びません。
ハクビシンとアライグマは互いの天敵になるのか|法律上の扱いが違う
アライグマは特定外来生物に指定されており、生きたままの運搬・飼養・放出が禁止されています。
一方、ハクビシンは特定外来生物に指定されていません。環境省の特定外来生物等一覧に記載がないためです。
政府は、現行の基本方針上、ハクビシンを特定外来生物に指定することは考えていないと答弁しています(出典:衆議院 答弁書 2019年5月31日)。
ただし、ハクビシンは2015年公表の生態系被害防止外来種リストで、重点対策外来種として掲載されています(出典:環境省生物多様性センター)。
また、ハクビシンは鳥獣保護管理法上の狩猟鳥獣(獣類)に指定されています(出典:環境省)。
同じ屋根裏に入る動物でも、アライグマかハクビシンかによって、法律上の扱いと手続きが変わります。
顔の模様で見当をつける
ハクビシンは顔の中央に、鼻から額にかけて白い線が通ります。
体色は灰褐色で、顔面と四肢の下部は黒褐色、額下部から鼻先の中央に白線が入ります(出典:国立環境研究所)。
本記事に掲載している画像は生成したもので、撮影写真ではありません。
見分けは実物の特徴に加えて、足跡やフンでも確認してください。
ハクビシンの弱点は何ですか?|嫌がるものと、その効き方の限界
唐辛子に含まれるカプサイシンの匂いを嫌う傾向があるとされ、これを使った忌避剤が市販されています(出典:害獣対策の窓口)。
超音波装置については、駆除業者自身が限界を案内しています。
1種類の音だけでは慣れてしまう可能性があること、超音波が届く範囲には限界があり1か所に置くだけでは足りない場合があることが挙げられています(出典:害獣対策の窓口)。
装置によって対象の動物が異なるため、ハクビシンに有効かどうかを事前に確認する必要があります(出典:害獣対策の窓口)。
弱点を突いてその場から動かせたとしても、封鎖をしなければ再発するという点は変わりません。
詳しい使い方はハクビシン撃退|音・超音波・グッズの効き方と限界で扱っています。
入られやすい家の条件
農林水産省は、幅6センチ×高さ12センチ程度の隙間があれば屋内に侵入できるとしています。
害獣駆除専門業者ホームスターは、一辺8センチの正方形、直径9センチの円形の開口部から侵入できると案内しています。
通風口などから住居内へ侵入する場合が多く、壁の隙間の有無が侵入されやすさに影響します(出典:農林水産省)。
農林水産省は、昭和30年代中頃から40年代後半に建築された建物で侵入率が最も高いとしています。
ハクビシンが来なくなる方法はありますか?|天敵の代わりに人がやること
駆除作業は「追い出し・捕獲」「清掃・消毒」「侵入口の封鎖」の3工程に分かれ、封鎖をしないと再発します。
ハクビシンは同じ場所に排泄する習性(ためフン)があり、天井のシミや悪臭の原因になります。
国立環境研究所は、ねぐらなどにため糞をする習性があり、通路上の側溝や溜まり水にも糞をする場合があるとしています。
環境省生物多様性センターは、家屋侵入により糞尿を排泄するため、天井のシミ汚れや異臭が生じる場合が多いとしています。
果実を好み、家庭菜園や果樹の被害も出ます。
農林水産省によると、令和5年度の全国の農作物被害額は約3億6500万円、被害面積は約0.3千ヘクタールです。
雑食性で残飯等も食べるというハクビシンの性質から考えると、外に食べ物を残さないこと、庭の果実を放置しないことが来させない工夫になります。
天井裏での具体的な点検・清掃の手順はハクビシン駆除は天井裏で何をするかで扱っています。
天敵に任せる前に|許可なく捕獲・殺傷はできない
鳥獣保護管理法により、対象となる鳥獣は許可なく捕獲・殺傷することができません。
ハクビシンは鳥獣保護管理法上の狩猟鳥獣(獣類)に指定されていますが(出典:環境省)、これは誰でも自由に捕まえてよいという意味ではありません。
住宅の被害を理由に捕獲する場合には、許可が必要です。
東京都環境局は、許可のない捕獲は1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になると案内しています。
栃木市も、許可なく鳥獣を捕獲した場合、鳥獣保護管理法違反として罰則を受ける可能性があるとしています。
捕獲許可の申請先は市区町村または都道府県の担当課で、被害状況の説明が求められます。
東京都内では、23区内は東京都環境局、多摩地区は東京都多摩環境事務所が申請先です(出典:東京都環境局)。
栃木市では、捕獲開始の10日前までに捕獲許可申請書の提出が必要で、わなは1日1回以上の見回りが義務づけられています。
対象以外の動物がかかった場合は、直ちに放獣することになっています(出典:栃木市)。
わなの貸出や捕獲を行っている自治体の、実際の条件
町田市はアライグマ・ハクビシン防除事業として、わなの設置・捕獲・処分を無料で行っています。
ただし消毒と侵入口の封鎖は自己負担で、わなの設置期間は最長3週間、延長はできません(出典:町田市)。
町田市は、民間業者の相談先として公益財団法人東京都ペストコントロール協会(03-3254-0014)を案内しています。
板橋区は平成29年度からハクビシン・アライグマの捕獲駆除事業を行っていますが、侵入路の封鎖、ふん尿の撤去、消毒は区の事業の対象外で、自分で業者へ依頼する必要があります(出典:板橋区)。
目黒区は箱わなの貸出と捕獲動物の回収費用を負担しますが、糞尿の清掃・消毒と侵入口の封鎖は自己負担です。
区内在住・糞尿被害の実在・立会いが条件で、年度1回限りです(出典:目黒区)。
横浜市は住居内への侵入被害に限り、市契約業者による捕獲・回収を無料で行います。
庭での目撃や池の被害は対象外で、一人当たり2週間まで、年1回限りです(出典:横浜市)。
上尾市は、ハクビシンは被害がある場合のみ捕獲許可の対象で、目撃のみでは捕獲できないとしています(出典:上尾市)。
屋内への住み着き等で市が対応できない場合は、防除業者への相談が必要で、費用は自己負担と明記しています(出典:上尾市)。
ここで挙げたのは町田市・板橋区・目黒区・横浜市・上尾市・栃木市の制度です。
ほかの市区町村に同じ事業があるかは確認していません。
お住まいの市区町村の担当課で、対象の動物と条件を確認してください。
自治体の制度は年度で変わることがあります。
自治体の制度もあわせてご覧ください。
天敵だと思った動物が、別の害獣だったとき
屋根裏の音や足跡の主が、ハクビシン以外である可能性もあります。
いえねずみ類(クマネズミ・ドブネズミ・ハツカネズミ)は鳥獣保護管理法の対象外で、自力で駆除できます。
**コウモリは鳥獣保護管理法の対象で、捕獲・殺傷はできません。**追い出しと侵入口の封鎖で対応します。
横須賀市は、屋根裏や縁の下にムササビ・コウモリ・タヌキが棲みついた場合の相談への回答を公開しています。
音だけで判断できない場合もあります。
木造住宅では、冬の乾燥時や天井裏と室内の温度差が大きい時に、木材の乾燥による軋み音が数年にわたり生じることがあり、必ずしも施工上の瑕疵ではなく木材の自然な性質による可能性があるとされています(出典:住まいるダイヤル)。
マンションでは、給排水管のウォーターハンマー音や、ポンプ・エレベーターの振動が固体伝搬音として聞こえる例も報告されています(出典:住まいるダイヤル)。
天井のシミや水音が雨漏りではなく、室内外の温度差による結露が原因の場合もあります(出典:住まいるダイヤル)。
住まいるダイヤルは国土交通大臣指定の住宅相談窓口で、住宅の不具合に関する電話・専門家相談を無料で受け付けています(出典:住宅リフォーム・紛争処理支援センター)。
動物の種類の見分けについては、テン・イタチとハクビシンの見分け方、アナグマとハクビシンの見分け方、屋根裏で音がする。正体を音から絞るで詳しく扱っています。
天敵探しをやめて、人に頼む判断をするとき
ハクビシンは天井裏で出産・育児をしている場合があり(出典:農林水産省)、生後3か月で成獣と同程度の体重になります。
時間が経つほど、頭数も被害も増えていきます。
自治体の事業では、侵入口の封鎖・清掃・消毒が自己負担になる例があります(町田市・板橋区・目黒区)。
その部分は、自分で手配するか業者に依頼することになります。
農林水産省は、ハクビシンにはノミやダニが付いており、それらが媒介する病気があるとしています。
賃貸住宅の場合、費用負担は管理会社または貸主との取り決めによるため、着手前に必ず確認してください。
依頼先を選ぶ観点はいい業者の見つけ方、費用の考え方は費用の考え方で扱っています。
まずは状況を整理するところから始めてみてください。
